「かまくら」と呼ばれる理由は? 名称の由来と歴史背景をたっぷり解説
2025/01/23
「かまくら」という言葉を耳にすると、多くの方は雪国で作られる小さな雪のドーム状の空間を思い浮かべるのではないでしょうか。
真っ白い雪を積み上げ、中をくり抜いて小さな部屋のようにした独特の構造は、まるで物語の世界のような魅力を放っています。
私自身、初めてかまくらに入ったときは、その外見とは裏腹に中が意外と暖かく感じられ、「雪の中にいるのにホッとする場所ができあがるのは不思議だな」と驚かされたものです。
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「雪の家」「スノーハウス」といった感じの名称なら分かりやすいのに、なぜ「かまくら」という響きになったのか不思議に思う方もいるかもしれません。
ここでは、いくつかの説や歴史的背景を含めて、「どうしてかまくらと名付けられたのか」をできるだけ分かりやすくお伝えします。
一説によると、「かまくら」の「かま」は「竈(かま)」、つまりかまどを指し、「くら」は「倉庫」「部屋」「空間」といった意味を持つ言葉に由来するという説があります。
雪をくり抜いて作った小さな部屋の内部で火を焚き、暖をとったり、飲食を行ったりできる場所として、まるでかまど(竈)のある倉のような機能を果たす、というイメージが合わさって「かまくら」という呼び方が定着したというのです。
昔から雪国では、冬の厳しい寒さをしのぎつつ、屋内で火を使って行事を行う風習があり、そこに竈と部屋が合わさったような空間を想起させる名称がつけられたのかもしれません。
また、「かま」は「窯(かま)」から来ているという説もあります。
窯といえば焼き物や炊事などで使う炉を想像しますが、見た目がドーム状で入口が小さいかまくらの形が、どこか窯にも似ていることから、「窯に似た雪の部屋」という発想で「かまくら」と呼ばれるようになったというわけです。
いずれにせよ、かまどや窯、要するに「火を使う設備」が連想される形状と機能が、この名前の大きなヒントになっていると考えられます。
一方、東北地方の一部地域では、「かんまる(kam-maru)」という古い言葉がなまり、「かまくら」になったのではないかという説もあります。
「かんまる」には「囲む」「包む」などのニュアンスが含まれ、雪で作った構造物が内側をすっぽりと囲む機能を持つことから、そう呼ばれるようになったとも言われます。
こうした民間語源的な解釈は多数存在し、一つに絞り込むのは難しいですが、いずれも雪の中で暖をとる、あるいは特別な空間を作るという発想がベースにあるようです。
かまくらといえば、秋田県横手市の「かまくら祭り」が有名ですよね。
小さなかまくらの中に入って、甘酒を飲んだり、お餅を食べたりといった体験ができるお祭りは、冬の風物詩として全国的に知られています。
かまくらの中は外の空気とは違い、意外と風を通さないために保温効果が高く、雪でできた壁が断熱材の役割を果たしてくれるのです。
私も実際に横手のかまくらに入ったとき、外気温は氷点下だったのに中は体感的にそれほど寒くなく、「なるほど、これが先人の知恵か」と感心した覚えがあります。
また、かまくらには子どもが遊ぶ場所、神様を祀る場所、飲食を楽しむ場など、地域や時代によってさまざまな用途がありました。
例えば、神様を祀る小さな社のように見立てて、歳神様への祈りや感謝を捧げるスペースとする風習もあったと言われます。
雪国の限られた期間にしか作れない、特別な「雪の部屋」という魅力があったからこそ、そんな多彩な活用方法が生まれたのかもしれません。
かまくらと呼ばれる雪の建造物は、単に寒さを凌ぐためのものではなく、コミュニティの行事として人々が集まり、温かい飲み物を囲んで語り合う文化を育んできました。
こうした共同作業や集いの場が生まれるのも、厳しい冬における助け合い精神やお祭り好きな日本人の気質があってこそかもしれません。
結論として、「かまくら」の名前がどこから来たのか、確たる一本の説があるわけではなく、竈(かま)+倉(くら)という機能を表す説、窯の形状に似ている説、地域の言葉が訛った説など、いくつもの由来が考えられています。
しかし共通して言えるのは、「雪でつくられたドーム状の小部屋」が、日本の雪深い地域で人々の生活や行事に溶け込む中で、こうした呼び名が広く受け入れられ、定着したということです。
冬の寒さを逆手に取り、雪を活用して独自の文化や楽しみを生み出してきた先人の知恵を振り返ると、かまくらという存在と名称は、ただの雪遊びではなく、深い歴史と地域の暮らしが凝縮されたものだと感じます。
厳冬期だからこそ味わえる、その白銀の世界の中での温かみや、ほんのりした明かりが灯る静かな空間──それが「かまくら」。
ぜひ機会があれば、実物に入り、その独特の風情を体験してみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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